シカゴのストリートウェア文化を担う「Joe Freshgoods」彼が放つ圧倒的デザインセンスのルーツに迫る

シカゴのストリートウェア文化を担う「Joe Freshgoods」彼が放つ圧倒的デザインセンスのルーツに迫る via Red Bull

「俺はインフルエンサーじゃない。インフルエンサーに影響を与える人間だ」と語るJoe Freshgoods(ジョー・フレッシュグッズ)。
デザイナー、起業家など様々な顔を持ち、絶えず進化し続ける彼は世界中のファンの心を掴んで離しません。
今回は、そんなJoe Freshgoodsのルーツに迫ります。

シカゴのストリートウェア店でファッションの道をスタートさせる

Freshgoodsは外部からの資金援助なしに、たった6年足らずでデザイナーとして不動の地位を築き上げました。

しかし、そのキャリアの始まりは、他の洋服好きの青年と同じようなものだったのです。

最初に働いたのは「Fashion Geek」

Freshgoodsは、高校卒業後の2005年、当時のシカゴで影響力のあったストリートウェア店「Fashion Geek」の販売スタッフとして働き始めます。

Fashion Geekは現在、存在していませんが、この経歴こそが「Freshgoods伝説」の始まりなのは間違いありません。

この時期が全てを生み出した、と後に語る「Leaders」時代

後に長年のクリエイティブパートナーとなる Terrell “Rello” Jonesと知り合ったFreshgoodsは、彼とともに2006年から「Leaders(リーダーズ)」に移り、見習いとして働くようになりました。

シカゴのストリートシーンに革新をもたらしていた店主のCorey Gilkey(コリー・ギルキー)の指導の下、衣料品デザインとシカゴ文化を組み合わせる方法を実地で学んだのです。

このときにFreshgoodsが生み出した新ブランドが「DBM」です。

たった80ドルの予算でTシャツにプリントし、Leadersの服を買った客に対して「俺のシャツが欲しくないか?」と尋ねて、テーブルの下でこっそり販売していました。

始まりは、まるで何かの密売のようでしたが、DBMのアイテムは飛ぶように売れていったのです。

最初のブレークアウトアイテム「Rihanna hat」を発売

DBMにとって、多くの人々からの話題を集めた最初のアイテムが、メッセージ入り帽子「Rihanna hat」でした。

後にFreshgoodsは、これを「馬鹿げたアイデアだった」と語ってはいるものの、シカゴ以外の場所から大きな注目を集めるきっかけとなっていました。

ブランド名を「Don't Be Mad」に変更

この頃、Freshgoodsは、DBMブランドの正式名称を「Dope Boy Magic」から「Don't Be Mad」へと変更します。

類似ブランド名の他社からクレームが付いたせいですが、そのおかげで「Don't Be Mad(怒り狂うな)」というポジティブなメッセージを思いつくことができたのは幸運だったと彼は語ります。

人気が高まる中、ついに実店舗をオープンする

世界的なストリートファッションデザイナー、Freshgoodsは、経営者としても優秀でした。

自分の商品がどれだけ人気を集めても、地に足を付け、できるだけ小さな店から始めたのです。

まさに、今話題の「リーン・スタートアップ」そのものです。

最初の店「first fake storefront」

first fake storefront_FADER

via FADER

2012年の夏、Freshgoodsは、シカゴの著名な写真家である Trashhand と共有していた自宅のガレージに、彼が「first fake storefront」(初めての偽の店先)と謙遜して呼ぶ、小さなストリートファッション店をオープンさせました。

現在、多くのファンにとっては有名な服も、ルーツはこの簡易的な店舗から始まっており、Joe Freshgoodsにとっては記念すべきファッションデザイナーとしての独立です。

「この店には、シカゴの誰もが立ち寄っていたよ」と彼は回想します。

3人のデザイナーと協業で「Fat Tiger」を始める

Fat Tiger_FADER

via FADER

「first fake storefront」を経営しつつも、「Leaders」に勤務していたFreshgoodsは、Jones、Owusu、Lloydという3人の優秀なデザイナーと知り合いました。

彼らはやがて共同創設者として、ついに初めての実店舗「Fat Tiger Workshop」をシカゴ市内のローガン・スクエア地区にオープンさせます。

4人はそれぞれが独自のデザインを発信し、自身のブランドラインを運営しました。

Fat Tigerの店舗は、場所を移すたびにどんどん拡大を続けています。

「それは母の胎内から続く、絶え間ない成長の物語だ」と、Freshgoodsは振り返ります。

世界の注目を集め続けるオリジナルコレクションを生み出す

Freshgoodsが生み出す衣服には、それぞれ独自の物語が込められています。

たとえば「Thank You Obama」は、シカゴで生まれ育ったバラク・オバマ元大統領に敬意を表した作品です。

同じくシカゴ出身で、古くからの友人であり支持者でもあるグラミー賞ラッパーの「Chance The Rapper」がモデルをつとめました。

Freshgoods自身も、オバマが大統領に当選した夜はとても興奮したと語っています。

「A Project Made With Towels」は、ヴィンテージの高級タオルを模したショートパンツのコレクションであり、「The Bears collection」は、NFLの伝説的選手であるWalter Payton(ウォルター・ペイトン)に対するオマージュ作品です。

人気のコラボレーションスニーカーも多数発表

Freshgoodsは、他社とのコラボを安易に引き受けません。

まず、その会社の歴史や理念から調べるといいます。利益優先ではなく「コラボに意味があるか」「ファンが喜ぶか」を慎重に検討してから物事を決める彼の姿勢は、世界から尊敬を受けています。

Don’t Be Mad × New Balance 992 “Anatomy of a Heart”

New Balance 992

via StockX

2020年、NBAオールスターゲームが32年ぶりにシカゴで開催されることを記念して、今やシカゴを代表するストリートブランドとして急成長を続けるDBMが、ニューバランスとコラボして世界に発信するスニーカーです。

Apple創業者の故スティーブ・ジョブズ氏が愛用したことでも知られる「992」を復刻し、赤やピンクの配色を中心に据えたグラデーションによって、心臓や体温を表現しています。

Joe Freshgoods × New Balance 990v3“Outside Clothes”

New Balance 990v3

via StockX

続いて、Freshgoodsがニューバランスとのコラボに挑戦したのが、伝統あるモデルの「990v3」です。

彼の故郷であるシカゴにて先行発売されました。

デザインは地球から着想を得ており、ベージュと水色の組み合わせが大地と大空を連想させ、アクセントとしての「N」マークも目を惹きます。

Joe Freshgoods × New Balance 2002R “Conversations Amongst Us”

New Balance 2002R

via StockX

2022年、Freshgoodsがクリエイティブ・ディレクターとして参加した新プロジェクト“Conversations Amongst Us”で発表されたコラボモデルです。

この「2002R」は、レザー・スエード・ナイロンという異素材を巧みに組み合わせつつ、柔らかい配色でまとめてみせた、彼の卓越したセンスが光る逸品です。

NBAプレイヤーのKawhi Leonard(カワイ・レナード)が出演しているプロモーションビデオも話題を集めています。

このプロジェクトでは、Freshgoodsが手がけるデザインのアパレルがさらに発表される予定で、世界が期待を寄せています。

「シカゴ」という街への親愛

Freshgoodsは、他にもシカゴ出身のアーティストとも多数コラボしています。

「シカゴに、もっと愛が必要だ。俺の物語は、シカゴで生まれ育ち、シカゴで物を作ること。そして、シカゴに行ったことのない人にシカゴのものを着てほしい。それが全てだ」

と話す彼の熱い郷土愛は、留まるところを知りません。

現在はワークショップを通じて、地元の若い才能を発掘することにも力を入れています。

斬新なセンスと真面目な人柄を併せ持つJoe Freshgoods

現在のような世界規模の名誉を手にしても、愛する故郷シカゴから離れようとせず、

「自分のデザインした服を売って、お金になるのは、今でも奇妙に感じる」

と語るJoe Freshgoods。

斬新なセンスと謙虚で慎重な一面を併せ持つ彼の魅力に世界はますます虜になっていくことでしょう。

SNKRGIRL編集部
SNKRGIRL編集部
神戸・東京・ニューヨークのメンバーと共にグローバルに活動する編集部メディアチーム。

このライターの記事一覧

SNKRGIRL編集部
SNKRGIRL編集部
神戸・東京・ニューヨークのメンバーと共にグローバルに活動する編集部メディアチーム。

このライターの記事一覧