【国際女性デー企画 2026】パリの名店Starcowで活躍する女性「Vee」と「Karine」特別インタビュー

【国際女性デー企画 2026】パリの名店Starcowで活躍する女性「Vee」と「Karine」特別インタビュー

国際女性デー企画に合わせてパリへ赴いた2026年。そこで出会ったのは、パリ中心地にある人気の名店「Starcow (スターカウ)」を支える2人の女性にインタビューしました。

コラボレーションとブランディングを率いるVeeさんと、VMD・ウィンドウディスプレイ・マーケティングを手がけるKarineさんは、90sの記憶やストリートの空気をいまの色とムードに落とし込みながら“ただのプロダクトじゃない物語”をつくり、“好き”が積み重なった空間で、流行よりも色や素材に既存のルールに捉われず、自分のスタイルを表現しています。

足元はいつだってスニーカーという彼女たちの言葉から、女性がスニーカーシーンをどうアップデートしているのかが見えてきました。

“Nike Girl”の原点と今の感性|StarcowのVeeが語る“コラボの作り方”

コラボレーションは「企画」ではなく「文化」から生まれる瞬間がある。

Starcowでコラボとブランディングを率いる女性「Vee (ヴィー)」。Starcowのコラボレーションとブランディングの責任者を務めて4年目の彼女は、15年以上ストリートの現場で"色"と"空気"を見てきたスタイリストでもあります。

色の世界観にとても敏感で、普段もたくさんのカラーバリエーション案を作り、同じリファレンスを共有し理解してくれる人たちと仕事ができています、と楽しそうに話すVee。

彼女が大切にするのは、“世界観を立ち上げる最初の一歩”と、“同じ参照元を共有できる仲間”だといいます。

1. 仕事のいちばん好きな瞬間は「創造の上流」

Starcowとは30年来の付き合いだというVeeがいちばん惹かれるのは、完成形ではなく、まだ何もないところに「世界観」を置く瞬間だといいます。

色に敏感な彼女は、常に多くのカラーバリエーションを考えながら、自分自身のカルチャーや経験を持ち込んで“始まり”を作っていきます。

好きな要素はいくつもあるけれど、いちばん響くのは“創造の最上流”にいられること。世界観を立ち上げるところから関われることですね。私は色の世界観にとても敏感で、普段もたくさんのカラーバリエーション案を作ります。自分の参照元や自分のカルチャーを持ち込んで、創作の上流から作れるのが楽しい。
それにSTARCOとは昔から知っていて、文化的な土壌が同じ。だから「合う」んです。ここに来て、同じ参照元を共有できる、理解してくれる人たちと仕事ができています。

Vee_Starcow Paris 7

2. コラボは「無理に作るものじゃない」

彼女の仲間がいるStarcowでは、その作り方がスムーズに通じていくそう。

その理由はシンプル。同じ土壌を共有しているから。

「Starcowはストリートカルチャー、ヒップホップ、スケートカルチャーを土台にしてきました。ここにいるのはみんな“好き者”ばかり。スニーカーが好き、テクニカルなプロダクトが好き、90年代やニューヨーク、若い頃に体験したものへのリファレンスが好き。だからコラボを一緒に作ることはとても自然で、関係性としても有機的です。私たちにとって、コラボは無理に作るものじゃなくて、自然に生まれるものなんです。

Starcowは2026年に30周年を迎えます。ヒップホップ、スケート、90年代、ニューヨーク。
彼らが積み上げてきたリファレンスは、Veeの感覚と一致しています。

コラボレーションは、“戦略”として組み立てるのではなく、互いの文化が自然に重なるところから生まれるもの

Veeはそれを「オーガニック」と表現します。

Vee_Starcow Paris 2

3. 「Nike Girl」から、素材に惹かれる自分へ

「一足だけ選ぶのは無理」。そう言い切るVeeの原点は、90年代を生きた“Nike Girl" (ナイキ好きの女の子という比喩表現)としての記憶。JordanやAir Max 1などをよく履いたそう。

でも同時に、今の彼女は素材や品質、色、プロダクトとしての完成度にも目がいく。Sauconyに惹かれるのは、時代の変化ではなく“感性の進化”だそう。

それでも、いちばん好きなモデルを挙げるなら——

「Air Max 1 “87”」

ノスタルジーと現在が交差する、彼女らしい回答でした。

好きなスニーカーを一つだけ選ぶなんて無理!(笑)私は根っこが“Nike Girl”なんです。90年代の青春で、Jordanもたくさん履いたし、Air Max 1もたくさん履いた。
でも人は変わる。今はSauconyもよく履きます。あれも歴史のあるブランドで、最初期のランニングブランド。だから本当に答えづらい…。
ノスタルジーに寄るならNike。いまの自分の感覚—素材やクオリティ、色、プロダクトとしての魅力—を基準にするならSauconyに惹かれる。

4. スニーカーは「どんな自分にもなれる」

Veeのスタイルはストリート/スポーツウェアが軸。最近では快適さや機能性も重視し、“制服”に近い感覚もあるといいます。
でも彼女は断言します。"スニーカーでだって、女性らしさも、強さも、色気も表現できる。"

ワンピース、ロングスカート、バギー、スウェット。
デザイナーズの一着にも、シックな服にも合わせていい。合わせ方に限界はない。

スニーカーでも、女性らしくとか、別の言い方をすると“セクシーに”見せる方法はいつでもあると思うわ。ワンピース、ロングスカート、バギー、スウェット…。何でも合うよ。デザイナーズな一着や、すごくシックな服にスニーカーを合わせてもいい。限界はないですね。

Vee_Starcow Paris 5

5. スニーカーカルチャーと女性:流れは確実に変わっている

男性優位だった空気を知る世代として、Veeは冷静に時代の変化を見ています。
今はクリエイティブな女性が増え、女性とのコラボも増え、デザインやDAなど責任あるポジションにも女性が立つようになった。

「自分は先頭じゃないかもしれない」と言いながらも、その流れを確かに肯定する言葉が印象的。

私の世代は、みんな一緒にこの文化の中で育ってきたけれど、全体としては男性優位の文化だったのは確かです。いまは新しい世代にこそ問うべきテーマかもしれないけど、この背景を経た今、クリエイティブな女性がどんどん増えているからすごく良いことだと思う。彼女たちが女性としてのエネルギーやビジョンを持ち込んでくれる。女性とのコラボも増えたし、アートディレクション、デザイン、プロダクトの責任あるポジションに就く女性デザイナーも増えているわ。私の道は「先頭」より少し後ろかもしれないけど、増えているのは本当にいい流れだと思います。

Vee_Starcow Paris 3

Veeが作るのはただの商品ではなく"ストーリー"

色、素材、90sの記憶。そうした断片を“今の街”のムードに翻訳して、プロダクトに落とし込む。

Starcowでは、スニーカーもテックアパレルも、これからもコラボが続きます。

そしてVeeが今後も手掛けるのは、ただの“商品”ではなく、カルチャーが自然に重なって生まれる“ストーリー=物語”なのです。


"好き"が重なる店が好き|Karineが語るスニーカーと空間の美学

スニーカーの話なのに、真っ先に語ったのは“店の空気”でした。

Starcowでビジュアルマーチャンダイジング、ウィンドウディスプレイ、マーケティングを担うKarine (カリン)。

6年にわたり、店の世界観をつくる彼女が愛してやまないのは、真っ白で均一な“今っぽいミニマル”とは別の美学——「好き」が積み重なって生まれるアイデンティティ。

1. 30年以上見てきたStarcowに、働く側として戻ってきた

KarineはStarcowを「30年以上前から知っている」そう。

ずっと好きだった店がパリに出店して、そこで働くことになった彼女が惹かれたのは、ショップに宿る“DA"(Direction Artistique=アートディレクション)という仕事の濃さでした。

「無機質じゃない」という言葉の裏には、均一化が進むリテールへの静かな違和感がある。
大企業による量販店は、白く清潔で完成されすぎた空間。

Karineが求めているのはその対極——人の好みやカルチャーがにじむ“生きた”店です。

まず、私はこの会社が“この会社らしいこと”が好き。この店にあるDAの要素が好きで、最近の他の店にありがちな「無機質さ」がない。ちゃんとアイデンティティがあって、ビジョンがある。Starcowは独自の方向性を持っていると思う。

Starcow Paris Store photo 1

2. マルチブランドな魅力は「統一感」よりも「好きの集積」

Starcowはマルチブランドであることも特徴のひとつ。
Karineはそこに「必ずしも整いすぎない良さ」があると言います。

家具も、プロダクトも、何かひとつのルールに揃えなくていい。
大事なのは“好きなものを選ぶ”という姿勢で、その積み重ねが結果として店の個性になります。

3. “推しの一足”より、色と素材に反応する

「一番好きなスニーカーは?」という編集部おきまりの質問へのKarineの答えは潔く、

「持っている靴は全部好き!」

といいます。

ブランド名ではなく、カラーパレット素材で靴を見るKarine。

昔は選択肢が少なく「Nike」と言えた。でも今は、まだ先頭に立っていないブランドも含めて選択肢が広がっています。

流行を追うより色と質感に正直でいたい——それがKarineのスタンス。

目立たないけど面白いブランドも増えていて、私は流行に乗るより、そういうところに惹かれます。色と素材により敏感ですね。

Karine_Starcow Paris 2

4.スニーカーしか履かない理由は反骨心かも

Karineはいま、ほとんどスニーカーしか持っていないそう。いわゆる“革靴”は、数えるほどしかないといいます。その背景にあるのは、子どもの頃の記憶。

「スニーカーはスポーツ用」「きちんとするなら革靴」——親世代の価値観として、それが当たり前だった。だからKarineも、少し無理をしてでも“革靴を履くこと”を求められてきたのだとか。

でも彼女は笑いながら、こう続ける。

だからこそ、いざ「もう履かなくていい」と自分で選べるようになった瞬間から、二度と戻らなかった。

スニーカーは、Karineにとってただの靴ではない。
「自由な自分」を象徴する毎日のスタンダードになっているのです。

Karine_Starcow Paris 3

5. “今日の4000歩”がスニーカーを決める日も

Karineのスタイリング基準は、ムードだけでは終わりません。

「その日何をするか」で選ぶという、実に現実的な判断が入るようです。

たぶん、その日の予定次第ね。ソールが硬すぎて4,000歩歩くだろうって日には向かない靴もあるし…。逆に今日は“マラソンの日”っていう日もある(笑)。コーデに合うとしても、快適じゃないなら選ばないこともあります。

コーデに合っても快適じゃないなら選ばない日もあるほど、スニーカーはKarineの日常に根づいたいま、“映え”よりも“ライフスタイル”にフィットしています。

6. 女性は"コード"に縛られない。だから前衛的になれる

Karineが語る「女性とスニーカー」は、過去と現在のコントラストが強いようです。
かつては女性サイズが少なく、キッズものを選ぶしかなかった。作りが違うから、プロダクトとしても妥協を強いられました。

でも今、スニーカーは“みんなの靴”になった。

そしてKarineは言います。男性には、バギーならこの幅、というような「コード=暗黙のルール」がある。でも女性はそこに縛られていない。快適さを選び、"コード"から自由でいられる。その自由さが、むしろ前衛性になったりもする。

昔は、私たちの意見はあまり聞かれなかった。そもそも女性の小さいサイズがなくて、キッズ売り場で買うしかなかったんです。子ども用は大人の足型に合わせた作りじゃないから、プロダクトとして別物になってしまうのに。

でも今はスニーカーが“みんなの靴”になった。
男の子には男の子の暗黙のルールがある。たとえばバギーを履くなら、それに合う“幅のある靴”が必要、みたいな。でも私たち女性はそこまでコードに縛られない。もっと快適さを重視するし、もっと前衛的。

さらに、女性の視点は男性の暗黙のルールを広げる力にもなる。

私たちは、男性が自分たちで作ってきたコードに対して、視野を広げる存在になれると思うの。それに今は、女性市場が大きいことに彼らも気づいた。私たちはもっと“自分を肯定して”生きているのかもしれないわね。ライフスタイルを通して、こちらの意思を表現している。たとえば、私はYves Saint Laurentを着ていてもスニーカーを履くの。服はハイブランドでドレスアップしても、スニーカーは服と同じ価値基準で評価しない。そこが面白いと思うわ。

「Yves Saint Laurentを着ていてもスニーカー」という言葉が象徴するのは、ラグジュアリーとスニーカーの関係を“上下”で見ない姿勢。

服はドレスアップしても、足元は自分の生活と感覚で決める——そのバランスが新しく感じます。

Karine_Starcow Paris 4

 

Karineの願いはシンプル|Starcowをもっと増やしたい

次のプロジェクトは?と聞かれたKarineに、迷いはありません。

「Starcowをもっと増やしたい」

空間をつくる人が思い描く未来は、いつも具体的。“白くて無機質”ではない、カルチャーがにじむ場所を増やすことが願いだというKarine。

彼女の仕事は、スニーカーを売るためだけのVMDではなく、スニーカーが生きる“景色”をつくること。スニーカーが“その人の生活”として存在できる景色を、空間ごとデザインしているのです。

編集長 Eriko
編集長 Eriko
SNKRGIRL編集長。アメリカ在住15年を経て帰国後メディアを創設。ダンサー/DJとしても活動。好きなスニーカーは「Air Huarache」。

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