プライド2023特別企画【CHISE NINJA 単独インタビュー vol.1】本場のVOGUEを伝えるトップダンサーのリアルストーリー

プライド2023特別企画【CHISE NINJA 単独インタビュー vol.1】本場のVOGUEを伝えるトップダンサーのリアルストーリー

【2023プライド特別企画】2012年に日本人として世界的にも有名なVOGUEチーム「THE ICONIC HOUSE OF NINJA (通称 "ハウス・オブ・ニンジャ")」の正式メンバーに選ばれ、数々のパフォーマンスや大会で注目を浴び、世界中で活躍するVOGUEダンサー

CHISE NINJA (チセ ニンジャ)

 

本場NYでVOGUEを学び、日本や世界にもそのVOGUEカルチャーを広めようと第1線で活躍する彼女がリアルストーリーと"言葉"を伝える、本当のVOGUEとは、ダンスとは、カルチャーとは、自分らしさとは。

<衣装提供>
UGG® JAPAN
靴:Tazz Pridepop

INDEX

ダンスを始めたきっかけ

SNKRGIRL編集長:ダンスを始めたキッカケは?

“ダンス”というものに触れ合ったのは3歳。

バレエとジャズダンスを教えている教室の先生のところにお姉ちゃんが通っていたんです。

チュチュとかバレエシューズを履いて踊っているのがかわいくて、お母さんに行きたいと言って連れて行ってもらったのがダンスに触れるきっかけです。

ダンスに没頭し始め、本当にダンスだけでやっていきたいと思ったのは14歳の夏。

大阪から宮崎に引越すことになった時に、宮崎には男性の先生が教えているヒップホップを教えているダンス教室しかなくて、そこに行くしかなくなりました。

そのスタジオがたまたまオーディションに積極的に参加しているところで、avexが毎年開催しているA-NATIONの宮崎サマーフェスで、TRFさんのバックダンサーのオーディションに参加することになったんです。

オーディションを受けたら、周りの友だちが落ちていってしまう中で、自分だけ2次、3次、4次と通過していって!

結果、TRFさんのオーディションに通ってバックダンサーができることになりました。

ステージに立つ前に、ステージ裏で「安室ちゃん!EXILE!倖田來未!」ってなって、もっとダンスの世界に行ったら、こんな有名な人たちの後ろで踊って、一緒にこの楽しい空間で踊れるんだっていうことから、「ダンスしよう」って (強く感じた)。

たまたま受けたオーディションで、たまたま受かったからやろうっていう単純な理由でした。

いろんな世界を見ることができて、習い事のダンスから本気のダンスをやろう、もっと自分の中の芯の部分も問い詰めてやろうと思ったんです。

VogueそしてHouse of Ninjaとの出会い

SNKRGIRL編集長:Vogueに出会ったのはいつから?どう知ったの?

最初はVogue(ヴォーグ)じゃなくてWaack(ワック)でした。

Tyrone Proctor(タイロン・プロクター)* がたまたま九州でワークショップを開催することが発表されたんです。2011年かそれより前だったかも。

(*Tyron Proctorとは、Waackというダンスの名付け親とも言われるダンス界のレジェンド。フィラデルフィア出身のダンサーで、70年代の伝説的なTV番組「Soul Train」に出演していたことでも知られている。世界中のダンサーに影響を与え人望も厚かった中、2020年に永眠。)

中学校1年生くらいの時にワックに出会って、英語も分からないのに、タイロン・プロクターのレッスンを英語で受けました。

実際にそのレッスンを受けた時に、日本の先生よりも、“本当に”やっている人たちから学ばないと私がやりたいものに近づけないと思ったんです。

それからお金もないし、宮崎から出てどこかに行くというのもできなかったから、Youtubeを見てました。

タイロンから教わった大阪のRm sisterを知って、やっぱりTyroneってすごいんだなと思ったり、どんどん探っている時に、

デパートみたいな場所の一角で、ただ周りながら手振りだけで踊っている人の動画を見たんです。

周りからランウェイを歩くモデルみたいに写真を撮られていて、モデルみたいなんだけど踊ってる。

それがめっちゃかっこいいんですよ。何このかっこいい人たちと思って見たら、「House of Ninja」って書いてあったんです。

「House of Ninjaすご!」って思って、そこからHouse of Ninjaに関して調べていたら、WaackとVogueって別物なんだっていうことに気付きました。

「じゃあVogueってなんだろう?」と思って調べるんですけど、出てくる情報が全部英語。

当時中1、中2とかだったので、何が書いてあるかもわからなくて。

その時スタジオにいたエイジさんに聞いて、じゃあ一緒に頑張ってみようかということで、House of Ninjaを一緒に調べてくれました。

調べてみたら、ニューヨークではレッスンを持っている人がいるから、そこに行けば会えるんじゃないかと思いました。

昔4日間だけのダンスツアーとか2週間のダンスツアーとかがスタジオにあったんですけど、保護者なしで単独で応募して行くツアーだから高額なんですよね。

でもそれを見つけてお母さんに「これ見つけた、ニューヨークに行きたい」って見せたらすぐに「あかん!」って言われて(笑)

「そんなお金ないやろ」と言われて自分でも「そうやな」と思いつつ、「でもやりたい!!」ってなって、

「日本には受けたいものがない」っていう状況で、それを説得するためにまたYoutubeをいっぱい見て、「ここのこの人たちに会いたい」「これをやりたい」っていうのが全部Vogue。

でも日本でその当時Vogueをやっているのがコッピーさん(Koppi Mizrahi)だけでした。

東京で活動されていた方だったから、宮崎にいた自分は知らなくて、ニューヨークしか見てませんでした。

「日本は?」って言われたけど「いや、本場が知りたい!」。

Tyroneを見てしまった以上、本物を見ないと突き詰められないから海外に行きたいっていうことを言ったら、1週間とか2週間のプログラムならいいよっていうことになって行かせてもらいました。

そこで、はじめてHouse of Ninjaのハビエル(Javier Ninja)とベニー(Benny Ninja)に会うことになったんです。

実際に会ったら「やっぱりヤバ!!」ってなって。

英語もわからずただ笑っているだけだったけど、色々全部教えてくれて、そのタイミングでやっぱりニューヨークなんだ!ってなりました。

日本に帰って1年くらい経って、もう1回戻ろうと思って、もう1回ニューヨークに戻ったんです。

憧れの「House of Ninja」メンバーに

(上) 写真のThe Iconic House of Ninja:Mother Sky Ninja Mermaid @sky_the_moon_ , Princess Sofia Ninja, Sattva Ninja (@_michellesattva) Sema-tawi Smart @sematawi,  Dmitry Devetyarov @dmitry.devetyarov,  Nikolas @nikolas_poe

SNKRGIRL編集長:衝撃を受けたダンサーに会えたそのあとは?

また向こうに行ったタイミングで、ハビエルに「ちょっとバトル出てこいよ」って言われたことがあったんです。

その時自分は16歳とかで未成年だったから、Ballroom(ボールルーム)*も入れなくて。NYのダンスバトルなんか行ったことないし、ドキドキで。

(Ballroomとは、Vogueカルチャーにおいてコンテストも行われるイベントあり、Vogueのダンスシーンの意味としても使われることがある。)

PMT(ニューヨークのダンススタジオ)ってところでたまにフリースタイル・ダンスバトルをやってたんですけど、元々自分たちはパフォーマンスをさせてもらえるっていう体で行ってました。でもハビエルには、「パフォーマンス出るくらいだったらバトルも出ちゃえよ!」って言われて。

当日、壁に貼ってある紙に名前を書いたら出れるよみたいな感じでエントリーもできて、ゆる!(笑)って思いながら、紙を確認したらヒップホップ...ハウス...ロッキン...

どれも出れないな〜って思って悩んでいたら、ハビエルに「関係ない。ヒップホップでもなんでも出ろ。俺が見るから。」って言われるんです。

その後バトルにエントリーしたんですけど、でも無理!ってなって泣いて出番を待ってたら、ハビエルが戻ってきて、目の前で20分くらい自分だけに向かって踊ったんです。Vogueなんだけど

「できるやろ、何の音でも。出ろ!」って言われて、何のジャンルだったのか忘れちゃったんですけどバトルには出ました...

SNKRGIRL編集長:それでバトルでは勝ったり、せめて予選だけでも通過できたの?

結局、2位までいきました!(笑)

SNKRGIRL編集長:スゴ!! (笑)

でもそれは多分、日本人ってこともあったし、やっぱり若いってこともあって優しくジャッジしてくれてるのもあったと思うんですけど。。。

決勝前にパフォーマンスがあったので、もう決勝はボロボロだったんですけど、2位まで行くことができました。

その時の映像をハビエルがThe Iconic House of Ninjaの人たちに、「House of Ninjaが好きだ」って日本から来てくれた子がいると見せてくれてました。

自分が日本に帰っている間も映像を見せてくれてて、上の人たちが話し合った結果、Ball (ボール)とかには出ていないけど、"House of Ninjaに入ってもいいよ"っていう連絡が来ました。

Vogueの本場ニューヨークに住む

その後2013年にニューヨークにまた行って、その時は2年くらい住みました。

それまでに中3〜高1の春休みに1回、高2〜高3の間に1回、この後にも1回行っているかも。

引越しするまでに2、3回は行っていますね。

高校を卒業したらすぐにニューヨークに行きました。

東京にVogueしに行きたいと思ったんですけど、1人しかヴォーグを教えている人がいないっていうのを知って、

それならもう、「2年間東京の受けたいものが何もない専門学校に行くより、ニューヨークに行きたい」とお母さんにお願いしました。

それを聞いて、「分かった、2年だけ。」って言ってくれて、NYへの渡米が実現しました。

ダンスの専門学校に行くってことしか頭になかったけど、その時に自分はこんなに何回もニューヨークに行かせてもらってて、自分は向こうにしか学びたいものがないから、学んで帰ってきたっていうのがきっかけです。

4回目くらいにニューヨークにちゃんと住み始めたのかな。

Vogue、全てが好き!

SNKRGIRL編集長:NYに住んで、現地で直接Vogueを学んでどうだった?

日常のことを体で表現しているのが、Vogueに繋がっていく。

ダンサーっていうのは技術を見せるっていうよりも、本当のストーリーをダンスで表現する、日常のストーリーテラーとして表現したことが踊りになっていく。

めっちゃダンスが上手い人はもちろんいるんですけど、上手くなくてもその人から物語が見えるんです。

それが本場のVogueにあって、すごく面白いところだと思いました。

SNKRGIRL編集長:Vogueの好きなところは?

えー、Vogueの好きなところ??

全部?!

あとShady (=シェイディー:ちょっと意地悪)なところとか、全部好きすぎて。

ファッションも好きだし、踊りももちろん好きだし、カルチャーも好きだし...

ヴォーグの何が好き?!選べない!!それが答えです!!

あと、自分を全部出せる(表現)ところも。

なかなかみんな味わったことないと思うんですけど、あれだけの目が集まるランウェイのファッションショーではリアクションはないじゃないですか。みんな見てるだけみたいな。

でもヴォーグは、みんながYEEEES!!!みたいな感じでめっちゃ盛り上げてくるんですよ。

そのバイブスを一気に100人以上からもらった瞬間のアドレナリンがやばすぎて、めちゃくちゃ気持ちいいんです。

これを1回経験してもらったら、大好きになると思います。

こんなにも人からのエネルギーで、自分だけじゃ感じられないエネルギーを感じてもっと踊れるようになるし。

もちろんバイブスだけではいけないこともありますけど。笑

影響を受けたダンサーは?

1番はWilli Ninjaです。

もう何も言えない、Willi Ninjaとしか言えないです!

私は直接会ったことはないから、生きてた頃の話をいろんな人から聞いて、絶対に会ったらChiseのことは優しく受け入れてくれるような、心のあったかい人っていうのはすでに分かってて。

やっぱりこのVogueのダンスシーン、New Way (ニューウェイ)っていうカテゴリーなんですけど、それを最前線で作ってきた人で、

あの時代にこんな形と顔だけで魅せられる、指先だけで表現できる...シビれる!

本当に1回見てほしい!(素晴らしすぎて)もう意味が分からないです!

最終的にHIVにかかってしまって足が動かなくなってしまったので、手だけで表現して踊るっていう映像も残ってるんですけど、「現役やん?!」って思います。

その後少しして亡くなっちゃうんですよね。

当時の映像も何より動きが綺麗。今の子たちは叶わない。

本当に別格です。それは言いたいです。

ニューヨークで出会ったJavier Ninja(ハビエル)やBenny Ninja(ベニー)ももちろんですし、Dannielle Polanco (ダニエル・ポランコ)、Leiomy (レイオミ)とか、DaShaun (デショーン)、Ballroomの中の人で言うとBaby Hurricane (ベイビーハリケーン) だったり、DIVO KOD(ディーヴォ)、もうみんなです。

みんな尊敬しています。

言い出したらキリがないです。私にとっては出会ったダンサー全員ですね。

商業的なダンスとストリートダンスの葛藤

こうやって本物を伝えていっている中で、やっぱりダンスって商売として頑張ってる人たちもいるんです。

本物の道があって、私たちは大好きだからその道を辿っていくのに、お金に目が眩む人って、上手いところ・良いところだけ取っていくんですよ。

良いとこ取りでやってて、でもそれを見るのは一般の人たちですよね。

一般の人たちがその奥にある本物の道を見るのは難しいから、今私たちがここにいるわけであって。

良いところだけを集めてやる、それを一般の人たちが見る、すごい!ってなった上でこっちに来た時に、カルチャーやその中の状況も知らないままただすごいですねという“言葉だけ”で終わる

それをやってほしくないから、本物の道から良い部分だけを摘む分には良いんですけど、その時、その世界に“本物”も一緒に連れて行って欲しいんですよね。

日本ではそれができていなくて、海外ではやっと最近バックダンサーでもBallroomにいる人だったり、状況が変わってきてます。

今回からビヨンセのバックダンサーもちゃんとBallroomにいた人やアジア人からもピックアップしていて、

日本でももっとそういった意識があれば、ストリートダンスがもっと違う形で広まっていたのかなと思ったりします。

 

続きはこちら>> Chise Ninja特別インタビューVol.2

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ライターまりん
ライターまりん
ライター まりん。Z世代。コスメ系コンテンツ担当。韓国アイドル&コスメオタク。好きなスニーカー「New Balance 327」

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