2026年3月、パリで発表されたnoir kei ninomiya 2026年秋冬コレクション。そのランウェイでひときわ強烈な存在感を放っていたのが、PUMAとの初コラボレーションとなる「SPEEDCAT BLOOMS」です。
ベースとなったのは、レーシングシューズをルーツに持ち、現在のロープロファイルトレンドを代表する一足となった「SPEEDCAT」。
その細く低いシルエットを大きく変えるのではなく、アッパーを無数の立体的な花で覆うという、noir kei ninomiyaらしいアプローチで再構築しています。
半透明のフラワーモチーフの隙間からは、SPEEDCATを象徴するPUMA Formstripが透けて見える設計に。オリジナルのアイデンティティを消すことなく、その外側にもうひとつの構造を作り上げることで、レーシングシューズとアヴァンギャルドなファッションを大胆に交差させています。
「DARK BLOOMING」──黒の世界から花が咲く

via @noirkeininomiya
このデザインを理解するうえで欠かせないのが、2026年秋冬コレクションのテーマ「DARK BLOOMING」。
今季のnoir kei ninomiyaが描いたのは、ブランドを象徴する黒の世界から、花が芽吹き、広がっていくイメージ。
コレクションのウェアでも、花や立体的なパーツを連結しながら巨大なフォルムを構築する二宮啓らしい表現が展開され、そのデザイン言語がSPEEDCATにも持ち込まれました。
つまり、この花は単なる装飾ではありません。
小さなパーツを繰り返し、つなぎ合わせることで、まったく新しい構造やボリュームを生み出す——そんなnoir kei ninomiyaの服作りそのものを、スニーカーという小さなキャンバスに凝縮したような一足です。
SPEEDCATを“履く彫刻”へ

via DSML
二宮啓のデザインを特徴づけるのが、従来の縫製だけに頼らず、パーツを連結しながら立体を作り上げていく実験的な構築方法です。
SPEEDCAT BLOOMSでもその発想は健在。
スリムでミニマルなSPEEDCATと、アッパーから大きく飛び出す大量の花。その極端なコントラストによって、見慣れたSPEEDCATがまったく別のオブジェクトへと変わっています。
PUMA自身も本作を“wearable sculpture(身に着ける彫刻)”と表現。フットウェア、ファッション、アートの境界そのものを曖昧にする作品として位置付けています。
それでも、その奥にはSPEEDCATの細いフォルムやFormstripが残っている。
原型を壊して別物にするのではなく、既存のものに新たな構造を重ねることで違う価値を生み出すところに、noir kei ninomiyaらしさが表れています。
BLACK、WHITE、REDの3色で異なる“花”の表情

via @noirkeininomiya
カラーは、BLACK、WHITE、REDの3色。
ブランド名にも掲げられるBLACKは、noir kei ninomiyaを象徴する色。無数の花が重なりながらも甘さを感じさせず、影のような奥行きと力強さを生み出しています。
対照的なWHITEは、複雑な構造そのものがより鮮明に浮かび上がるカラー。そして鮮烈なREDでは、SPEEDCATのレーシングDNAと花の有機的なフォルムがぶつかり合い、よりドラマティックな表情を見せます。
PUMAによれば、WHITEとREDには、日本に春の訪れを告げる桜へのリファレンスも込められているとのこと。noir kei ninomiyaのシグネチャーである黒から、白、赤へと花が広がっていくカラー展開も「DARK BLOOMING」のストーリーとリンクしています。
二宮啓 / noir kei ninomiyaとは?
noir kei ninomiyaは、デザイナーの二宮啓が2012年にスタートした、COMME des GARÇONS傘下のブランドです。
二宮はCOMME des GARÇONSでパタンナーとして経験を積み、川久保玲のもとから自身のブランドを立ち上げたデザイナーのひとり。
ブランド名の“noir=黒”が示すように、黒を中心とした世界観を軸としながら、金属パーツやハーネス、立体的な装飾、複雑な連結構造などを用いた実験的な服作りで知られています。
一見すると非常に装飾的でありながら、その根底にあるのは緻密な構築。
だからこそ今回のSPEEDCATも、「花柄のスニーカー」ではなく、花そのものを構造として靴を作り変えるという発想になっています。
ファッションとスニーカーの境界をさらに曖昧に
ここ数年、ロープロファイル人気によって再び脚光を浴びてきたSPEEDCAT。
しかし、noir kei ninomiyaはそのトレンドにそのまま乗るのではなく、現在最も見慣れたスリムスニーカーのひとつを、あえて巨大な花で覆い隠しました。
レーシング、スポーツ、ファッション、クラフト、そしてアート。
それぞれ異なる領域を横断しながら、それでも一目でnoir kei ninomiyaと分かる。
2026年に数多く登場しているSPEEDCATの中でも、これほど原型の意味そのものを変えてしまった一足は珍しく、スニーカーを“履くためのプロダクト”からファッション表現へ押し広げた、非常にスペシャルなコラボレーションです。
noir kei ninomiya × PUMA SPEEDCAT BLOOMS
国内発売:2026年8月7日より順次発売
価格:111,100円(税込)
カラー:BLACK / WHITE / RED
サイズ:22.0〜29.0cm
国内ではnoir kei ninomiya取扱店舗を中心に展開されています。三越伊勢丹も8月7日からの2026FW「DARK BLOOMING」の展開とPUMAコラボレーションの発売を案内しています。
個人的には今回、「111,100円もするSpeedcat」なのに、その価格を“高級版Speedcat”として説明しないことが重要だと思います。これは通常のスニーカーコラボというより、noir kei ninomiyaのコレクションピースとして捉えた方がデザインの意味も価格も理解しやすいです。