【パートナーシップ制度について】同性婚となにが違うの?どこの自治体が実施?問題点も含めて解説

【パートナーシップ制度について】同性婚となにが違うの?どこの自治体が実施?問題点も含めて解説
同性婚が認められていない現在の日本で、「結婚に相当する関係」であることを証明するために自治体が独自で発行している「パートナーシップ制度」。
“同性婚”との違いやパートナーシップ制度によるメリット・デメリット、課題や事例も合わせて、現在の日本の状況と向き合いましょう。
INDEX

パートナーシップ制度とは

同性婚が法的に認められていない日本で、自治体が独自に同性カップルに対して「結婚に相当する関係」とする証明書を発行。

証明書を発行することによって、様々なサービスや社会的配慮を受けやすくする制度のこと。

近年では多様なジェンダーの在り方に応えるために、同性パートナーだけでなく、東京都港区の「みなとマリアージュ制度」などの性的指向・性自認にかかわらず利用可能にした制度や、パートナーの子供も家族とみなすような「ファミリーシップ制度」も実施されています。

いつから始まったの?

2015年の11月5日、東京都の渋谷区と世田谷区で、日本で初めての同性に対するパートナーシップ制度が誕生しました。

渋谷区は同年4月から施行された「男女平等及び多様性を尊重する社会を推進する条例」という新条例によって、同性パートナーシップ証明制度を実現。

渋谷区と世田谷区のパートナーシップ制度発行をきっかけに、全国的にパートナーシップ制度の導入が広まりました。

パートナーシップ制度はどこで導入されている?

現在(2022年6月)では、日本全国218の自治体で「パートナーシップ制度」が導入されており、人口普及率は52.6%になっています。

2015年の渋谷区、世田谷区からはじまり、2021年4月には100を超える自治体が導入。

福岡県では60、茨城県では44、青森県では40など、パートナーシップ制度を導入する動きは全国に広がり、サポートを示す自治体は増え続けています。

同性婚との違いは?

パートナーシップ制度は婚姻とは違い、現時点(2022年6月)では自治体が独自に規定するもので、国の法律の効力は反映されません。

そのため同性婚のような法的な効力はなく、公的な証明となる「宣誓書受領証」を発行し、あくまで市や県などが2人の関係性を認めるという形になっています。

男女の婚姻と同等の法的保障はないため、法律上では他人ということになります。

パートナーシップ制度でできること/できないこと

自治体によって、それぞれできること・できないことは異なりますが、代表的な例を一部紹介します。

できること

公営住宅などへ家族として入居ができるようになる

民間の保険、金融、通信などの家族向けサービスが利用できるようになる

病院で家族と同等の扱いをしてもらえることが期待される

生命保険の受取人を指定することができる
(生命保険会社によって条件が異なりますが、様々な生命保険会社が同性パートナーを受取人に指定できるよう改めています。)

できないこと

法的に家族になれないため、“家族”として扱ってもらえない

パートナーは相続権がないため遺言状がなければ財産を相続できない、相続税の優遇措置がない

パートナーの扶養に入れず、配偶者控除が受けられない

パートナーが出産した子どもを一緒に育てても親権を持てない

パートナーが外国籍の場合、在留資格が与えられない

パートナーに先立たれた際に、遺族給付金が支給されない

法的な保証がないことから起こった理不尽な事例

パートナーの火葬に立ち会えず、共同経営の会社を奪われる

40年以上連れ添った同性パートナーの火葬に立ち会えず、親族からも「何の権利もない」と言い放たれた事例もあります。

パートナーの生前には理解を示していたように見えていた親族が態度を一変させ、パートナー名義の通帳を持ち出したり、廃業通知を勝手に取引先に出して、

共同で運営していた事務所(名義としてはパートナーの方が事務所の代表になっていましたが、実質的には男性のほうが働いて生計を立てていたそうです)が継続出来なったそうです。

慰謝料700万円の支払いとパートナーが生前に約束した財産の引き渡しも求め、訴えを起こしましたが、「男性の供述以外に証拠がない」として、合意の成立を認めず、男性の訴えを退ける結果となりました。

PRIDE JAPAN

 

同性を理由に犯罪被害の遺族給付金を受け取れない

同性パートナーを殺害された人が、同性を理由に遺族給付金を不支給とした公安委員会の裁定取り消しを求めたにも関わらず、「社会通念が形成されていたとは言えない」として請求を棄却しました。

犯罪被害者等給付金支給法によって、「事実上婚姻関係と同様の事情にあった者を含む」と定められているにも関わらず、遺族給付金の対象外とされ、

「支給法にも性別に関しての文言はなく、被害者救済の趣旨に当てはまる」と訴えるにも関わらず、その点には触れず、「社会通念上、同性パートナーの関係は婚姻関係と同視できない」という一点で、支給を否定しました。

CALL4

 

同性であることを理由に“家族”と認められない

パートナーが倒れて入院することになった際、勇気を持ってパートナーであると告げたにもかかわらず、医師は「親族でなければダメだ」と目の前にいるパートナーへ病状の説明を拒否し、別室から妹に電話をかけたといいます。

入院先となったのはHIV診療の拠点病院であり、多数のゲイ当事者を受け入れている病院であったにも関わらず、パートナーとして病状の説明も受けることが出来ない。

パートナーシップ制度は法的に認められているものではないため、「自分やパートナーに何かあった時に家族として扱ってもらえないのでは」という不安と隣り合わせなのです。

ハフポスト

動き出している世間の認識

2021年3月17日、札幌地方裁判所が、同性婚を認めないのは「違憲」とする判断を示しました。

原告の同性カップル3組は、日本の憲法24条で婚姻は「両性」の間で成立すると規定されており、この規定は同性婚を否定していないと主張。

その他、同性婚を認めないことは、幸福追求権を定める13条、法の下の平等を定める14条にも違反するとして、国に対して1人当たり100万円の損害賠償を請求していました。

札幌地裁は、13条と24条については違憲には当たらないとしましたが、法の下の平等を定めた14条に違反すると判断を下しました。

 

しかし、原告の訴えと札幌地方裁判所の判断に対して、加藤勝信(前)官房長官は同日に行った記者会見で「政府としては、婚姻に関する民法の規定が憲法に反するものとは考えていない」と発言。

原告の損害賠償請求が棄却され、他の裁判所で継続中の同種訴訟についても「判断を注視していきたい」と述べるにとどまり、各地の地裁が同性婚を合憲と判断したとしても、同性婚の法制化が保証されるわけではないのです。

 

原告団のひとりである中島愛さんは、同性婚を認めないのは「違憲」であると判断が下されたことについて、「日本にとって大きな一歩になった。夢の実現に一歩近づいた。」話しています。

さらに原告の国見亮佑さんは、「異性愛者と同性愛者という『生まれながらの違い』で差別をすることは、憲法14条に違反すると裁判長がはっきりおっしゃってくれた。涙が止まらなかった」と語り、

賠償請求は退けられたものの、大きな成果を勝ち取り実質的な勝訴だという声も多数あがり、この札幌地裁の判決が大きな分岐点となったことは間違いありません。

2020年4月に公開されたMarriage for All Japanが行った同性婚に対する意識調査からは、調査対象となった人のうちの7割強が同性婚に賛成していることが明らかになっており、政界の婚姻関連の法改正が進まない一方で、多くの人が多様性の重要さに気付き始めています。

“同性婚”の実現へ

さまざまな自治体でパートナーシップ制度の導入が進んでいますが、男女の夫婦と同じ法的保障はないため、異性カップルと同じ権利が与えられていないというのがパートナーシップ制度の現実。

パートナーシップ制度で同性カップルの尊厳が回復されることはなく、性別を理由に異なる扱いを受けてはなりません。

実際に身近にいるのだと感じるために、セクシュアルマイノリティの存在や数を“可視化”するためには有効的なパートナーシップ制度ですが、あくまでも同性婚の成立へ向けたステップとして、同性婚の実現を求めて現在も全国でさまざまな声があげられています。

編集部まりん
編集部まりん
編集者/ライター まりん。Z世代。コスメ系コンテンツ担当。韓国アイドル&コスメオタク。好きなスニーカー「New Balance 327」

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