特別解説【A Ma Maniére (アママニ エール)について 】黒人の尊厳と未来への道を示すショップ/ブランドとは

特別解説【A Ma Maniére (アママニ エール)について  】黒人の尊厳と未来への道を示すショップ/ブランドとは via A Ma Maniere アトランタ

Air Jordan 3 “Raised by Women” に始まり、美しいエアジョーダンモデルを輩出し世界中のスニーカーファンを魅了しているブランド「A Ma Maniére (アママニエール)」。

デザインに込められたメッセージやブランド創設者の想いは特別で、世界の多くの人にとっても大切なものが込められています。

日本でも“アママニ”の愛称で親しまれているものの、国内ではスニーカーの販売部分のみがフィーチャーされ、ブランドの想いやバックグラウンドを紹介しているところをあまり見かけないのが、いつも残念でならなかったSNKRGIRL編集部。

そんな「A Ma Maniére (アママニエール)」が伝えようとするメッセージを、日本の皆さんにもより知っていただきたく、ブランドについて詳しくご紹介いたします。

A Ma Maniére(アママニエール)とは

アメリカ合衆国アトランタ、ヒューストン、ワシントンD.C.にある、フランス語で“My Way, My Own Way (=私独自の方法) ”を意味する言葉を冠にしたセレクトショップ「A Ma Maniére(アママニエール)」。

Social Status、APB、Prosperなどと合わせて全米で18の店舗を運営する小売ネットワーク「The Whitaker Grp(ウィタカーグループ)」が運営するのショップの1つで、

INSPIRED BY PARISIAN CULTURE & FASHION
(=パリジャンのカルチャーとファッションにインスピレーションを受けて)

というコンセプトの元、ラグジュアリーなセレクションとストリートの感性が融合する唯一無二の世界観は、世界中の多くのファンを魅了しています。

ブランドの創設者James Whitner氏

世界中のファッションファンを魅了するA Ma Maniéreのブランド創始者は、ピッツバーグ出身のJames Whitner (ジェームス・ウィットナー)氏。

貧しい地域で育ち、両親は中毒と闘い、友人の多くは成人する前に亡くなっているという、厳しい環境で過ごしてきましたが、1997年から2001年にかけてペンシルバニア大学エデンボロ校で学び、経営学の学士号を取得しています。

その後の2004年、ある銃撃事件に巻き込まれ銃弾に倒れ、撃たれて地面に横たわっているあいだ人生の変曲点を感じたWhitner氏は、ビジネスがコミュニティーを向上する手段にならないだろうか、という願いを抱くようになりました。

「犯罪や暴力が起こってしまうのは、どうしようもなく辛い環境とストレスによって引き起こされるものが多い。アメリカ社会における人種差別や格差の問題に対して、こういった現状に変化をもたらし、みんなで問題に立ち向かわなければ、何も変えることができない。」

そんな思いを抱き、ストリートウェアの店を開くという夢をかかげ、ノースカロライナ州シャーロットへ引っ越すことを決意します。

James Whitner_a-ma-maniere-the-owner2

彼が最初に開いたのは「Flava Factory (フレーバーファクトリー)」というショップでした。2005年にオープンし、シャーロットに2店舗できましたが、「Social Status (ソーシャルステータス)」に再投資することを決めたとき両方とも閉鎖しています。

そのSocial Statusは2011年にオープンし、当初デニムブランドとしてスタート。洋服とスニーカーのセレクトショップに拡大し、自社ブランドの他に、COMMES des GARCONS、Billionaire Boys Club、Nike Sportswear、Play Cloths、The Hundredsなどの人気ブランドを扱い、現在ピッツバーグとノースカロライナに5店舗を展開しています。

 

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Social Statusは、"beSocial"というコミュニティー拠点/クリエイティブハブとしての役割も果たしています。つまり、小売ショップでありながら、人が集いセミナーやワークショップも開催するといったショップ以上の場としても地域に貢献しています。

こうして、ショップを店の中や近くにあるコミュニティに焦点を当てた"ハブ (=拠点)"としても機能させることにより、人々が交流することにより一種のセラビーのような場所としての役割を果たす他に、様々なトピックに関する教育を提供し知識のギャップを埋め、十分なサービスを受けていないコミュニティに力を与えることを目的とした場所としての役割も果たしているといいます。

Social Statusの成功により、Whitner氏はA Ma ManiereとA.P.B.もオープンさせることができました。

黒人社会と地域コミュニティーに貢献することのみならず、白人に支配された世の中のシステムが変わるまでは、ビジネスやプロジェクトを成功させ自分たちの存在を証明し続けなければいけない、という強い意思と目標を掲げ、今日もブランドとグループを経営し運営しています。

ブランドの理念とメッセージ性

A Ma Maniére(アママニエール)が掲げるブランド理念も、もちろん「ファッションを通して人々に力を与え、コミュニティーを支援していく」こと。

「個々人は皆、それぞれの文化に影響されている」という考えを込めて名付けたA Ma Maniére(アママニエール)は、ただ人気のストリートウェアを販売するだけではなく、地域コミュニティーや黒人コミュニティーに深く根付く人たちに、ショップがファッションを前に進めていくインスピレーションであり原動力となるように、というビジョンを元にデザインされています。

A Ma Maniére (translated as My Way in French) embodies the idea that individuals are influenced by their culture. Our boutique is designed to represent and inspire a fashion forward clientele deeply-rooted within their community. 

そして、アママニエールはブランドの本質を通して、嘘のない正直な姿勢と、他では得られない独自で限定的な魅力、そしてプロダクトやブランドに求めるクオリティーの高さを表現しています。

We represent quality, exclusivity, and the capacity to express honesty through brand integrity.

これらの理念は、メッセージとしてAir Jordanとのコラボレーションデザインにも落とし込まれ、世界中にその影響力の広がりを見せています。

それは、黒人社会とコミュニティーに還元し、人々に力を与え、インスパイアし、みんなでより良い未来へ向かって前へ進むため。

ほとんどの店舗を意図的に黒人居住区にオープンし、商品を販売するだけでなく、地域の人々に教育の機会を設けたり、コミュニティーに様々な形で恩返しをするため、Hand.Wash.Cold、APBYOU、beSOCIALのようなコミュニティプラットフォームを設け、人々の力となり手助けとなるよう支援しています。

世界中が虜になるAir Jordanコラボレーション

これまで、Jordan Brandの中でも絶対的な人気を誇るAir Jordan 1を始め、Air Jordan 2やAir Jordan 3など、さまざまなコラボモデルを発表してきたA Ma ManiéreとJordanシリーズ。

上品で洗練されたA Ma Maniéreとのコラボならではのラグジュアリーなデザインだけでなく、そのデザインの背景には、力強いメッセージが込められています。

度々注目を集めるA Ma Maniére x Jordan Brandのコラボモデルを、それぞれのモデルに込められた深いメッセージや想いと共にご紹介します。

Air Jordan 3

Air Jordan 3 “Raised by Women”は、幼い頃にWhitnerが母親から初めて買ってもらった靴であるAir Jordan 3をベースに、これまで度々スニーカーシーンで除外されてきた“女性”向けのスニーカーとして誕生しました。

女性が着用するにあたって自然に取り入れられ、尚且つ男性にもそこに疎外感を与えない柄として“エレファントパターン”をキーデザインとして選んだと話しています。

さらに、ヒールタブの裏側には「All We Have Is Each Other」や「You Have to be Comfort Walking Alone」などの格言が隠されており、本来のスニーカーのあり方や核心として欠かせない精神を反映させています。

日々、日常に欠かせないツールであるスニーカーが、男性だけのものではなく、女性にとっても日常的なものであること、そして、スニーカーの本質を改めて考えさせてくれる1足です。

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ア マ マニエール × ナイキ エア ジョーダン 3 A-Ma-Maniere-Nike-Air-Jordan-3-DH3434-110-look-4 via A Ma Maniere
ア マ マニエール × ナイキ エア ジョーダン 3 A-Ma-Maniere-Nike-Air-Jordan-3-DH3434-110-look-3 via A Ma Maniere

Air Jordan 1

Air Jordan 1 “Airness”は、絶え間ない逆境、搾取、不正に直面した黒人コミュニティの誇り、影響力、回復力からインスパイアされたもの。

Whitnerは、「私たちの存在や問題について声をあげないと、私たちは自分たちの仕事をしていないことになり、文化や業界に貢献していることにもなりません。私たちは日常的に存在するあらゆる問題に直面し、“誰も望んでいない”対話を始めなければならないのです。」そう語っています。

ブラック・ブラウンのコミュニティの全ての人の環境をよくするために、自分自身の存在を主張し、自分たちが置かれている状況や問題を主張する義務感、

そして進歩のために絶え間ない努力をし続けている人々の想いや、その進歩を妨げるシステムに対する疑問を提示するための手段としてAir Jordan 1 “Airness”が誕生したのです。

ア マ マニエール ナイキ コラボ エアジョーダン 1A-Ma-Maniere-Nike-Air-Jordan-1-DO7097-100-pair via SBD

Air Jordan 2

Air Jordan 1に続き、“Airness”というタイトルと共に展開されたAir Jordan 2は、勇敢で、永遠で、そして誰にも否定できない、壊すこともできない、強い力に満ち溢れている“あなた”という存在、そして“あなたの未来”への希望を表現した1足。

さまざまな経済環境や階級が存在し、アメリカでブラック・ブラウンとして生きる上での複雑な問題や葛藤があるなか、それでも懸命に生きている人々の美しさからインスピレーションを受けています。

「愛」や「美」の象徴とされながら、劣悪な環境でも育つことができるたくましく凛々しい花である「バラ」がキャンペーン動画でもフィーチャーされ、

Air Jordan 2 “Airness”のストーリーからも、強くそして美しいメッセージ性を感じる1足となっています。

A Ma Maniere Air Jordan 2 Airness image アママニエール エアジョーダン 2 コラボ スニーカー via Nike

Nike Air Ship

“幻のモデル”とも呼ばれ、Air Jordan 1前身モデルとして知られる、まさにJordanシリーズの“始まりの1足”であるAir Ship。

そんなAir Shipをフィーチャーしたコラボデザインは、影響力のあるストーリーを拡散させるというコミットメントと、神話的なシルエットの起源を称えるデザインとなっています。

ブラックとブラウンのコミュニティが、たとえ誰の目にも止まらない環境下でも、計り知れない労力や時間をかけて、その問題と向き合うという深い葛藤からインスパイアされています。

2,300足限定でリリースされ、全てにシリアルナンバーが刻まれたA Ma Maniere Air Shipは、Jordanシリーズの始まりとなった伝説的な1足の歴史と、逆境や困難が渦巻く環境でも懸命に一歩を踏み出してきたコミュニティの先駆者たちを称えています。

Air Jordan 4

Air Jordan 4 “Violet Ore”は、情熱とビジョンを持ち、目的・目標に向かって世界を変えていくためにアクションを起こし続けているブラック&ブラウンのリーダーたちから触発されたモデル。

現在に至るまでも数々の“Trailblazers(革新者、開拓者)”たちが一歩を踏み出して道を切り開き、今もなお新しい世代にその想いが受け継がれ続けている、一歩一歩が確実に世界を変えるという価値観や先駆者たちへのリスペクトが込められています。

そして、どんな困難や逆境が立ちはだかったとしても、何度も立ち上がり、世界を変える力を持つ若者への希望を表現。

このモデルが自分の信念を貫き、希望と勇気を持って、より良い未来へと世代を一つにする原動力や活力となり、そしてその想いは必ずより良い未来へと繋がっていると信じさせてくれるような1足です。

アママニエール エア ジョーダン 4 A-Ma-Maniere-Air-Jordan-4-DV6773-220-pair via SBD

ブランドを通して黒人としての尊厳を表示しコミュニティーに力をもたらす

Air Jordan (エアジョーダン)とのコラボレーションは、すべてのモデルの注目度が高く多くのファンが夢中になる「A Ma Maniére(アママニエール)」ですが、ただHYPE (ハイプ=アツい/大流行の)なブランドとして知っているだけでは到底足りない、あまりにも壮大で重要なメッセージを伝えています。

人種差別問題や格差といった、アメリカ社会にとって重く複雑で厳しい問題は解決へ向けた道のりは長く、人々は、団結し世代を超えて伝え続けることによって少しずつ変化をもたらしより良い未来へと繋げていこうと、日々闘い続けています。

その方法の1つとしてA Ma Maniére(アママニエール)は、デザインやコンセプトにメッセージを落とし込み、ファッションという影響力を通して世界に伝え、ショップをコミュニティーを育て団結する場所として提供しています。

こういった問題は、黒人社会のみならず世界の至るところで人々が日々抱えています。

私たちがA Ma Maniére(アママニエール)がデザインしたスニーカーを買って履くことは、こういった大切な想いも伝えるという役割もあるのではないでしょうか。

SNKRGIRL編集部
SNKRGIRL編集部
神戸・東京・ニューヨークのメンバーと共にグローバルに活動する編集部メディアチーム。

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