ダイバーシティとインクルージョンって結局どゆこと?東京五輪から学ぶ社会問題について

ダイバーシティとインクルージョンって結局どゆこと?東京五輪から学ぶ社会問題について ダイバーシティとインクルージョンって結局どゆこと?東京五輪から学ぶ社会問題について
SNKR GIRLをご覧のみなさんと一緒に社会の課題を考える記事 第1回
「SDGs」「サステナビリティ」「エシカル」「ダイバーシティ」「インクルージョン」etc...
最近よく耳にするこれらのキーワード、意味はなんとなくわかるけど、説明してと言われたら困ってしまうという方、意外と多いのではないでしょうか。
これらは社会の課題を考えるときに重要なキーワードのごく一部です。例外なく全ての人に関係があります。今の世の中や、私たちの未来、そして私たちの子どもたちの未来をより良くするためには、一人ひとりが、社会の課題を意識的に知ろうとし、解決に向けて出来ることから実践しなければなりません。

1回目となる本記事は、「ダイバーシティ」と「インクルージョン」について、一緒に考えていきましょう。
via Speakeasy TYO

すべての人が幸せに共生するために

日本では、「ダイバーシティ(Diversity)」は、多様性、「インクルージョン(Inclusion)」は包括性調和と訳されます。ここ数年の間に、企業や学校、イベントやブランド、メディアなどあらゆるところで、こぞってこの言葉を使い始めました。平和の祭典であるとされる東京オリンピックでは、この「多様性と調和」をビジョンのひとつに掲げています。

多様性と調和
人種、肌の色、性別、性的指向、言語、宗教、政治、障がいの有無など、あらゆる面での違いを肯定し、自然に受け入れ、互いに認め合うことで社会は進歩。
東京2020大会を、世界中の人々が多様性と調和の重要性を改めて認識し、共生社会をはぐくむ契機となるような大会とする。

TOKYO2020大会ビジョンより:https://olympics.com/tokyo-2020/ja/games/games-vision

明るみに出た数々の「反」多様性と調和の問題

東京五輪のビジョンである「多様性と調和」。ですが、振り返ってみるとどうでしょう?様々な問題が次から次へと表面化したのは記憶に新しいですよね。見過ごせない事件を挙げていきます。

1. 森喜朗元JOC会長による「ミソジニー」発言

「女性は競争意識が強いから、1人が発言したら自分もとなり時間がかかる。結局女性は発言に時間規制をしないとなかなか終わらない。(中略)」といった内容の発言で、女性に対して全く根拠のない「性差別」をしました。国内外から女性蔑視の声が上がり辞任しましたが、その直後にもベテラン秘書の女性のことを、「女性と呼ぶにはあまりにもお年」などと発言しています。
このような女性蔑視・女性差別のことを「ミソジニー(misoginy)」と言います。辞書では、女性や女性らしさに対する嫌悪や蔑視と説明されます。また、ミソジニーの考えを持つ人を、ミソジニスト(misogynist)といいます。このような女性嫌悪は、男性から女性へだけでなく、女性から女性に対しても持つことがあります。

2. 五輪開会式の元演出統括、佐々木氏による「ルッキズム」発言

佐々木氏は渡辺直美さんを豚に仕立て、「オリンピッグ」というダジャレと掛けて檻の中で興奮する豚を演出する案をチーム内に提案し、それが外部に漏れ国内外から批判を浴び辞任しました。残念ながら日本のお笑い界では、ハゲ・デブ・ブサイクなどと言って人の容姿を笑いにすることが今だに行われますが、海外では人の見た目に言及すること自体NGです。人の容姿をからかうことは「ボディシェイミング」といい、これは人を見た目でジャッジし、優遇したり差別したりする「ルッキズム(lookism)」が根底にあります。

ルッキズムとは、辞書などによると「人を容姿で判断し、差別または優遇すること」と説明され、「外見至上主義」とも言われます。他人に対してだけではなく、自分自身もルッキズムの考えにとらわれて、自分の容姿に嫌悪したりコンプレックスを植え付けてしまう可能性があります。
日本はメディアなどの影響もあり、ルッキズムに過剰に捕われています。容姿に対しても、例えば二重まぶたの方が美しい、痩せている方が美しい、サラサラのストレートヘアが美しいというように、美の基準みたいなものがあり、そこに多様性への配慮が見られないことが問題です。

3. 人種活動に関する抗議パフォーマンスを禁止→後にルール改定し容認へ

IOCは五輪憲章の「競技会場や選手村で政治的、宗教的、人種的な宣伝活動を禁じる」に則り、人種問題の抗議パフォーマンスを禁止していました。ですが、黒人の人権を訴える「ブラックライブズマター運動」(BLM運動)を機に世論が急速に変化したことや、アメフトのコリン・キャパニック選手や大坂なおみ選手を始め多くのアスリートが、自分たちの影響力を使って抗議をする流れもあり、のちにIOCが一部容認しました。そもそも、理由もなく抗議はしません。不平等が存在しているのであれば、そしてインクルージョン(調和)を掲げるのであれば、それらの抗議活動は認めるのが当然だと私は思います。人権に対する抗議は政治的プロパガンダでも宗教活動でもなく、人としての基本的な権利の訴えですしね。

4. ホテルで「外国人専用・日本人専用」の張り紙

五輪関係者の宿泊客の多い都内のホテルにて、エレベーターや食事会場に「外国人専用」「日本人専用」という張り紙を貼っていたことが明らかになり、差別であるとの抗議が殺到しました。ホテルによるとコロナ対策のためということでしたが、それなら「海外から入国したお客様」とすればいいのに、これではまるで人種隔離政策です。赤坂は元々外国人が多く住むエリアであり、このホテルも3ヶ国語で案内しているにもかかわらず、日本に住む外国人や、ミックスレースの人々の存在を忘れたかのようなあまりにも短絡的な対応でした。後にホテルは「差別的な意図はなかった」と謝罪。一連の出来事は国内外のメディアに拡散されました。

5. 開会式の元音楽担当、小山田氏の過去の障がい者いじめ問題

ミュージシャンの小山田圭吾氏が学生時代に、障がい者に対して凄惨ないじめをしていたことを25年前の雑誌のインタビューで武勇伝のように語る内容が明るみに出て辞任しました。その内容は、障がい者を裸にして自慰行為を強要、排泄物を食べさせる、プロレス技の暴力など。これらはいじめという言葉が使われるべきではなく、もはや性虐待、拷問です。これまで謝罪も行われなかったとのことですので、オリ・パラに関わる人選としては全くふさわしくありません。こちらも海外メディアに広く拡散されています。

6. 五輪開会式の演出統括、小林氏の過去の「ホロコーストネタ」問題

佐々木氏の後釜の演出統括である、元お笑い芸人の小林氏は、過去のネタの中に「ユダヤ人大量虐殺ごっこ」というキーワードを入れていました。内容がどうであれ、笑いのネタにナチスやホロコーストを使うことは、どう考えてもタブーであり、世界中からの非難は逃れられません。すぐにアメリカのユダヤ人団体から非難コメントが届き、解任されました。

7. セネガル人パーカッショニストが五輪開会式の演奏メンバーから外される

長野五輪でも日本の音楽チームで演奏に参加したセネガル人の打楽器奏者、ラティール・シー氏が、直前に一方的にキャンセルされました。理由は「なんでここに黒人が?」となるから。担当者はラティールさんだけを外したわけではないと主張していますが、その他の演奏者の情報は入ってないとのことです。多様性と調和を掲げるオリンピックでの不可解な差別行為は本人からの告発により明るみになり、国内外に拡散されました。

8. 開会式の音楽にLGBTQ差別主義者のすぎやまこういちの音楽を流す

選手入場時に流れたドラゴンクエストのテーマを作曲したすぎやまこういち氏は、ホモフォビア(同性愛嫌悪者)で、反LGBT発言でも問題になった人物です。LGBT法案の成立を阻止するための団体での評議員もしています。「多様性と調和」の対局にいる人物の曲は、開会式まで表沙汰にならず、実際に使われましたが、その後、国内外へこの件が拡散されました。

9. 竹中直人氏の過去の障がい者ネタの舞台が発覚し、開会式出演を辞退

俳優の竹中直人氏は開会式に出演する予定でしたが、直前に自ら辞退を申し出ました。理由は過去に自らの演出作品において、視覚障害者を揶揄して笑いを取ったり、セーラー服の女性を模したマネキンに性的虐待を加えるものがあったからとのことでした。

東京オリンピックを通して突きつけられる、日本人の人権意識の低さ

実は残念なことに、オリンピックの裏では、ここにひとつずつ列挙していたらきりが無いほど、まだまだ多くの事件が起きています。これらの問題は全て「人権」を侵害した差別行為です。程度の大小は関係ありません。「差別」という言葉を日常生活で使わない人にとっては、強烈な批判に感じてしまうかもしれません。ですが、女性蔑視、障がい者いじめ、黒人差別、ユダヤ人の揶揄、ボディシェイミングなど、相手や相手の属するグループを冷遇したり、不利益を与えたり、精神的・肉体的にダメージを与えることは、「差別」として、その時その時に、しっかりと指摘しないと、学ぶ機会を逃し、他所でまた同じことが繰り返されてしまいます。

「多様性と調和」を掲げている以上、オリパラに関わる人たちの中に、そのようなことがあっては説得力も何も無いことは想像に容易いですよね。東京オリンピックにまつわる一連の出来事としてこれらのことが明るみに出たのは、まさに今まで日本がそれらを有耶無耶に処理してきたツケが回ってきたものです。最近は日本語の匿名コメントも、すぐに拾われて英語の記事になりますので、上に挙げたような失態の数々に対して、擁護したり一緒になって差別に便乗するようなコメントも全て世界へ発信されてしまいます。

via washington post

取ってつけたような多様性の演出

開会式では、アフリカ系のミックスである八村塁選手が騎手をつとめ、大坂なおみ選手が聖火の最終ランナーに大抜擢。国歌を歌うMISIAのドレスはLGBTQカラーであるレインボーのドレス。一見とても多様性を尊重した大会に見えるかもしれません。ですが実際はどうでしょうか。これほどまでに多くの問題を背負って始まってしまった東京オリンピック。先程挙げたような問題が明るみになったことで、日本が「人権後進国」であるということが、国民にも海外にも広く周知されてしまった今、私には正直言ってどんな演出もまるで取って付けたかのような茶番に見えてしまいました。

八村塁選手や、大坂なおみ選手が選ばれたことは個人的には心の底から本当に喜ばしいことだと思いましたし、嬉しかったです。ですが同時に、JOCがお手軽に多様性を演出しようとしているように感じて、複雑な気持ちになりました。

「大坂や八村は東京五輪のプロパガンダに利用されている」 米紙が問題視する日本の人種差別というリアル
Yahoo!ニュースより https://news.yahoo.co.jp/byline/iizukamakiko/20210802-00251041

多様性に向けてのアクションはことごとく却下されている

オリンピックを目前に控えた今年6月、性的マイノリティへの理解増進を図る初めての法律「LGBT法案」が国会に提出されずに閉会してしまいました。与野党合意案ができたにもかかわらず、です。理由は、自民党が「種の保存に抗っている」などの問題発言などをし、強く反発したから。性的マイノリティに対しての「差別禁止」という言葉を入れることすら強く反対したんです。信じられますか?また、自民党は法案の国会提出を求める弁護士・法学者の署名の受け取りを拒否しています。

そもそも日本は同性婚も、選択的夫婦別姓も認められておらず、男女格差ランキングも120位でワースト2位、フェミニストを男性が叩く風潮はネットの定番です。
差別に対する教育が組み込まれていないので、差別への意識が低い人が多く、特に人種差別は根深く、「自分は差別をしていない」と無自覚の人も多いです。日本を単一民族国家であると信じ排他的な人もいます。また、冒頭でも述べたように、ルッキズム(容姿による差別)やセクシズム(性差別)、エイジズム(年齢差別)に捕われています。そして、あらゆる基準が白人史上主義に傾倒しています。(この話は別の機会にじっくり書きたいと思います)

開会式演出の話に戻りますが、行動の伴わない多様性の演出は、説得力がありません。はりぼての演出に使われた大坂選手や八村選手は、何を思ったのだろうと思いを巡らせずにはいられません。
閉会式では、ロンドンを拠点にするRina Sawayamaの曲 ”Chosen Family” が流れました。この曲は彼女がLGBTQ+コミュニティの友人へ捧げた曲です。 ”Chosen Family” には、家族は自分たちで選べる、家族の概念は自由、という意味があります。
もはや日本の現状を考えたら皮肉でしか無いですよね。

まとめ「ダイバーシティとインクルージョンは流行語トレンドワードじゃない!」

ダイバーシティとインクルージョンについて考えてみましたが、みなさんいかがでしたか?
多種多様な人間を認め合い、誰一人疎外されることなく、すべての人が幸せに共生できること。
ただのトレンドワードではありません。私たち人間全てに関係のある、崇高で偉大な目標です。日本はまだまだまだまだ、これから。一緒に学び続けましょう。

川原直実(Fabfive Tokyo)
Air Jordan歴10年以上。ヒールも大好き。 本業はアートディレクター、WEBデザイナー、ソーシャルメディアプランナー、ライター、YouTuberなど。
ブラックカルチャーを学んで、人権を考えるJapan for Black Lives代表
https://japan4blacklives.jp/
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