【JixieさんへインタビューVol.2】スニーカーが持つ“ストーリー”と評価されてこなかった女性の存在

【JixieさんへインタビューVol.2】スニーカーが持つ“ストーリー”と評価されてこなかった女性の存在

アメリカ・ニューヨーク在住の女性スニーカーコレクターである“Jixie”ことJasmineさんにインタビュー。

“良いコレクション”とは何か、さまざまなスニーカーと出会ってきた彼女の忘れられない大切な思い出、評価されてこなかった女性の存在についてもお話しいただきました。

INDEX

スニーカーが伝えてくる“何か”がある

コレクションから見える“独自性”

「何が良いコレクションを作るのか?」、それには様々な答えがあると思う。

でも私にとっては、コレクションの中で見る人の独自性が素晴らしいコレクションを作る要素だと思ってるの。

だからそれは、芸術のキュレーションのようなもの。あなたが興味を持っているアートのようなもの。

スニーカーに関しても、それが私たちのアートのようなものなの。だから、私たちが興味を持っているアートは何かみたいなね。

私にとってそれはバスケットボールのスニーカー。

だから私の”アート”には色のこだわりがある。イリデセント(光の反射によってさまざまな色に変化する素材)が大好き

インスタグラムでTaytayとして知られているTaylorもイリデセントが大好きで、彼女とはそこで繋がっているの。

スニーカーが特に訴えかけてくるような要素があるんだよね。

だからたとえ私がその人たちのことを知らなくても、彼らのコレクションを見ると、そこにある好みとかこだわりから、その人たちのことを知ることができた気分になる。

私の収集したいもののなかで“ピンク”っていうのがあるの。

だから私はずっと世界で一番大きなピンクスニーカーのコレクションを作りたいって思ってる。

だから、みんながピンクスニーカーに不満を言っている間、私はそのピンクスニーカーを全部買ってた。

“多様性”に誇りを持っている

多様性。私は自分自身がとても多様性に富んでいることを誇りに思ってる。

例えば、私の芯ともなるようなニューヨーク発の大好きなブランドがある。ニューヨーク出身らしく、ジョーダンとかね。

ジョーダンやナイキやアディダスは、私たちのアイデンティティーにとっては大きな存在。

ニューバランスもそう。今でもニューバランスは大きな存在になってるけど、90年代にもすでに人気だった。だから、それも私たちの中心部となるパーツの1つだね。

そう、だから私は全てのブランドが好きなの。

Diadora(ディアドラ)もお気に入りの一つ。ちゃんとした、本当に格好良いブランドを着るようにしてる。

忘れられない大切な瞬間

自分自身の始まりのスニーカー

たくさんのブランドが好きだけど、その中でも私の“初恋”は、Reebok (リーボック)だった。

「5411(:ReebokのFreestyleのこと。ニューヨークでの販売価格が$54.11だったことからそう呼ばれていた。)」はまさにトレンドに敏感な女の子が履いてるスニーカーだったの。

オーバーサイズの巨大なデニムにストラップのついたReebok、大きいイヤリングを付けて...そうじゃないとかっこよくなかった。

大きなイヤリングをつけて、襟を立てて、Reebokを履いて...そうやって襟をたてなきゃだめだったの。

それが私の育った時代だった。

夢にまで見たスニーカーの山が現実に

ReebokのFreestyleはモノトーンも出たし、全てがワントーンで統一されてた。

全部イエローとかグリーン、レッド、ピンク、ブルーとかも出たね。

それを合わせたかったから私は全部のカラーが必要だったの。それは子供服みたいだった。本当だよ、なんてったって私はいつもすべての色を持っていたかったから。

子供の時、母が「何色が欲しいの?」って聞いてきたんだけど、私は「全部」って。

そしたら母が私を見て「顔出して、パンチしてやるから!笑」って言ってた。

週ごとに新しい色を買ってもらってた。

今週は学校の行事があって紫を着るから紫のリーボック、その次の週はホワイトかブルーだったかな。

この頃からソールにギザギザのデザインを付け始めたんだよね。

そして私は靴底がギザギザのものが必要だった。

今では通常のものと同じだけど、少しだけビブラムソールがついてたの。それが必要だった。

だから私も変わっていったの。内側の裏地をデザインし始めて、それが少しずつ見えるようになった。

だからそれが必要だった。

それがどんどん、どんどん増えていって、今までずっとイメージしてた部屋がスニーカーの山になるって状況になったの。

そこから、生まれて初めて自分が独自のコレクションを作っていく姿が想像できたの。

そうなるともう止められなくて、もう私は中毒になってた。

「これはもうすごいことになる!私はあちこちにスニーカーを持ってるってことになるんだ!」ってワクワクしてた。

スニーカーに囲まれて過ごした幼少期

それは私の人生をより豊かにしてくれた。

私の両親もスニーカーが好きだったから私と同じようなこともあっただろうけど、でも私の場合はそれをはるかに超えていったの。笑

両親は「おまえの部屋はベッドとスニーカーだけだな」って言うから私は「そう、まさにそこが好きなの」って答えてた。

靴とベッドだけの部屋が大好きだった。

私自身のストーリーだからスラスラ話が出てきちゃう。

「最初のスニーカーは何?」とか「お気に入りのスニーカーは何?」って聞かれると、私の歴史の一部だから流れるようにどんどん話が出てくるんだよね。

どんなスニーカーもストーリーを持ってる

ずっと前からスニーカーが大好きで、たくさんの、たくさんの、忘れられない大切な瞬間が本当にたくさんある。

「スニーカーに関するたくさんの話があるからいくつか本を書いた方がいいよ」ってみんなにも言われるんだけど、私も「もちろん書くでしょ」って。

どんなスニーカーだってストーリーを持ってる。

だからスニーカーのことを考えると、今じゃ少し年齢も重ねてきたし、スニーカーごとに振り返られる思い出が色々ある。

例えば、シカゴのフライトチケットを買ったんだけど、ただスニーカーを取りに行って、戻ってくるだけのこともあった。

パリでスニーカーを手に入れるために、本当にパリまで飛んだことも覚えてるよ。

このエピソードは本当に自分でも笑える(笑)

その時インターンシップをやってたんだけど、「今日君はここにいなきゃいけないよ」って言われたの。

でも私は「でもとても重要な用事があってできないんです。家族の問題があって、本当に大切なことなんです。」って言って断った。

そしたら彼らに「わかった、だけど君が戻ってきたときには、もうインターンは続けられないかもしれないよ」って言われた。

だけど私は「やらないといけないんです。家族の緊急事態だから」って。

そんなのデタラメで、本当はスニーカーを買いに行くためだったんだけどね。笑

本当にパリに行くつもりだった。だってそのスニーカーはたった300足しかなかったから。

当時は、他の場所からスニーカーを手に入れるための特別なルートとか転売業者もなかったから、自分で頑張って取りに行くしかなかった。

スニーカーが最優先だった

欲しいスニーカーがあっても自分自身が行くしか方法がなかったの。

そうじゃないと実現しなかった。

だからこういうスニーカーを手に入れた経緯を考えると、「あんたホント狂ってる。スニーカーのことが好きすぎる、狂った女だね」って自分に言ってた(笑)

私たち全員が同じだよね。私たちはみんな同じようにメンタルがやられてる(笑)

スニーカーが大好きで、それに支配されてるんだよ。

私たちはそのことを賞賛してもいる。もちろん理解できない人たちはいるだろうけど。

評価されてこなかった“女性”の存在

“女性らしさ”の束縛

そして、女性にとっては、賞賛するのがまだ難しかったりする。

なぜなら一部の文化では「何?女がこれを好きって?」っていう風に冷ややかな目で見られることがあるから。

私が共有したいストーリーの1つは、女性がフラットシューズを履くようになると、それが男性的だと見なされてきた歴史があるということについて。

女性が最初にバスケットボールを始めた頃を振り返ると、彼女たちは小さなヘルメットを被っていたの。

こんな感じの小さなヘルメットで、フラットな靴を履いていて、その靴には小さいゴム製のヒールがついてた。

だから当時は女性がバスケットボールやスポーツをするとき、ヒールがついた靴を履いてたの。

その理由は、スポーツをする時にも“女性らしさ”を保ちたかったからなんだって。

だから、そういった(古い)考え方がどれほど強力なのかを考えると、フットウェアや日々の行動に潜む“女性らしさ”を維持することで、

男性にとって女性用フットウェアに違いをつけて維持して、女性をヒールに縛りつけることが社会的にも重要だった。

女性は常にスニーカーの中で重要な存在だった

そこから社会が進歩しているなかで、今でも多少の“女性らしさ”を維持させられてるよね。これは男性と男性の権力者によって。

私は今誰が社会をコントロールしているのか分からない。

でも今でも私たちは“女性”と“男性”に分けられてる。

だから「ウィメンズスニーカー VS メンズスニーカー」とか「ウィメンズのカラー VS メンズのカラー」とか、私たちは分けられていたりする。

女性はネイルをスニーカーに合わせたり、バッグをスニーカーに合わせたりする。これも女性性を維持する手段のひとつでしょ。

世界がそれを100%受け入れる準備がまだできていないんだけど「あなたたち女性は常にスニーカーの主要な消費者であり、スニーカーのリーダーだ。」ってこと。

なぜなら、お母さんたちは息子たちのためにスニーカーを買うし、家族全員のためにスニーカーを買う。

親も仕事に行くために、息子たちも学校に行くために快適でなければならないからね。

だから、女性は常にスニーカーの中で重要な存在だった。なのにも関わらず、それに対して十分な評価を得られていない。

今では女性を前面に押し出すのがポピュラーになってきたけど、まだまだやるべきことがたくさんある。

私たちにはもっとたくさんカバーしないといけない仕事があるの。

ブランド側が提供すべき本当の価値

ブランドと消費者の間のズレ

ブランドと実際の消費者との間には、多少のズレがあると思う。

なぜなら新しいスニーカーが出てきた時に「これは売れずにセール行きになるだろうな」と思ったりするから。

なんで売れないか分かるって、前にも同じようなデザインを見たことがすでにあったから。

それとも他の何かを待っているのか、もっと人気があるものを手に入れようとしているだけなのかとか。

時々ブランド側はスニーカーをあまりにも早まってリリースすることがあるから「それは慎重に考えられているのか?」とか「それは誰のために使ったの?誰に伝えたいスニーカーなの?」って思う。

今は、私たちはスニーカーやスニーカーを買うことについても、もっと深く、慎重に考えるようになっていると思う。

そして、それはブランドが本当に認識しなければならないこと。

ただ箱に入れて渡すだけではダメ。

私たちに本当に価値のあるものを提供しないとダメなの。

そういったこともあって、今はコラボアイテムがとても注目されているんだと思う。

 

続きはこちら>>Jixieさんへインタビュー Vol.3

SNKRGIRL編集部
SNKRGIRL編集部
神戸・東京・ニューヨークのメンバーと共にグローバルに活動する編集部メディアチーム。

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