【JixieさんへインタビューVol.3】人生の目標でもある“女性をインスパイアすること”、そして変わり続ける文化

【JixieさんへインタビューVol.3】人生の目標でもある“女性をインスパイアすること”、そして変わり続ける文化

アメリカ・ニューヨーク在住の女性スニーカーコレクターである“Jixie”ことJasmineさんにインタビュー。

人生でやり遂げたいことは「女性をインスパイアすること」と話す彼女が見てきたスニーカーシーンの今、そしてこれから、今も変わり続けている文化についてもお聞きしました。

INDEX

スニーカーシーンの現状

繰り返すスニーカーのストーリー

私は全く新しい尊敬の念を抱いてることがあって、それは企業文化を変えることや本当に実際女性を前面に出すことがどれほど難しいかに対してなんだけど、

でも、もし女性が重要な決定者になることが増えれば、私たちは一生を終える前にそういった変化を見ることができるだろうし、そのことにとてもワクワクしてるの。

本当に楽しみにしてるのが、もしかしたら10年の間に、次の世代がどんな靴を履いているのかを見られるのかなってこと。

今は、私のポジション的には、様々に違ったスニーカーのストーリーを聞いている最中で、それは同じようなサイクルを繰り返してる感じなの。

同じスニーカーでも全く新しい話がたくさんある。それで「そのスニーカーの話とは違うんだけどな...?」って思うことすらある。

例えば、最初にあれが出てきた時は、そんなに人気でもなかったんだけどな〜って思ったり。

マジで、そんなわけないでしょ!って。だから、今ブランドは全く新しい話を作って、新しい世代に紹介することができるんだよね。

ブランドが求めるもの、与えるもの

新しくて新鮮なものへの欲望

ブランドとか若い子たちが求めているものの全ては、新しくて新鮮なことだと思う。

全てのものを新しくて新鮮なものとして紹介したいのかも。

そうやって新しいものを追い求めたいという欲望の中で、時折私たちは歴史の一部を見失ってしまう気がするの。

そして若いデザイナーがたくさんいるよね?

デザインチーム、マーケティングチーム、そしてプロダクト(製品開発)チームがある。みんながそれぞれのアイデアを結びつけている

それはまるでゴシップみたいだと思うの。

こっちでゴシップ話して、その話がどんどん変わっていって最終的にはまるっきり違う話になってたりする。

だからスニーカーのデザインは、最終的リリースまでに辿り着く時にはデザイナーの元のアイデアや考え、元々のマーケティングプラン、そして歴史といったものとは異なった、まるで新しい物語になっていることがある。

ただ異なるものに変換されてしまう。だから私が常に尋ねる質問は、「このスニーカーは誰のためなのか」。

“誰のため”のスニーカーなのか

スニーカーを見るとき、私は「このスニーカーは誰のため?」って考えるの。

デザインとかマーケティングを見て「これは若いコレクターのためだな」とか「これは男性のためだな」とかそういうことを考える。

これはかなりヘビーに集めてる男の人が必死になるだろうな、こういうの大好きだろうな、とか。

これはたぶん、どういう素材や何が使われているとその人たちにウケるのかが分かっているからだと思う。

良いレザーを使っていたりスティングレー(“泳ぐ宝石”とも呼ばれるアカエイ鞣した革)を使っているとか、そういうのってめちゃくちゃ盛り上がるの。

他にも豪華なパーツが付いているとか、彼らが好きでたまらないもの。

彼らはそういうのが大好きなの。だから時々、私はスニーカーを見て「これは誰のため?」って考えたりする。

自分自身の好きなものを分かっている

女性に関しては、ジッパーやバックルが追加されることがあって「いや、イマイチだけど...でも私たちにはこれしかないんだよね...」って思ったりする。

他にはピンクやミントみたいな色も多い。最近はミント色が多いね。

今それぞれブランドによって、私たちに少しずつ違ったものを与えてくれている。

でも私は自分自身が何が好きなのかを知ってる。例えば2023年(インタビュー当時)には本当に素敵なボックスを期待してる。

ダストバッグとかトラベルバッグも。なぜなら私はいつでもどこへでもスニーカーを持ち歩くから、良いハードウェアが欲しいね。

私はaglets(靴紐の先の金具のこと)とデュプレ(靴紐につける金具のパーツ)があるのを見たいと思ってる。

スニーカーをより楽しく、ワクワクさせるものが好きなの。

良い素材使いが好きだから、良いレザーとかサテン、キャンバスが好き。

異素材を組み合わせたデザインも好き。だからそういうデザインが見れるのを期待してる。

だから、時々ブランドが出すものを見ながら「ああ、これも、これも...これもダメだな」と感じるの。

スニーカーシーンにおける“エンパワーメント”

人生でやりたいのは“女性たちをインスパイアする”こと

私がこの人生でやりたいことは、“女性たちをインスパイアする”こと。

私たち女性って、スポーツとかスニーカーを愛することに対して、いつも(社会的な)力を得たことがなかった。

いつだって「tomboy(おてんば/男勝り)だね」とか「スニーカーヘッドだよね」っていう風に言われるだけで。

子供の頃は、スニーカーヘッドと呼ばれると私は怒ってた。当時スニーカーヘッドは悪口だったから。

悪い意味として使われてたの。「ああ、お前はスニーカーヘッドだな」って言われると、私はただスニーカーしか知らない、頭の中がスニーカーだらけの何も知らないってことだったから。

私がスニーカー好きの頭空っぽのまぬけで、尻軽女とかはぐれものとかそういう悪口みたいな言葉だった。

その当時で言うと、例えば、ヤク中ならクスリをやる、することといったらクスリだけ。

スニーカーヘッドって言葉の使い方も当時はそれに似てたの。

だから私が若かったとき、周りには「彼女には何も聞かないで」って言われてた。「彼女はただのスニーカーヘッドだから」って。

もうどうでもいいわ!って思ってたけどね。

“female sneakerhead”という言葉

そして、時が流れて時代が変わっていく中で、私はその言葉を受け入れることを学ばなきゃいけなかった。

私はその言葉(スニーカーヘッド)に反対だったの。

多分、何かのインタビューで「自分はスニーカーヘッドではない」って言ってるものもあると思う。

それは私がその言葉を受け入れるのにかなりの時間がかかったから。

その言葉が私にとって変わり始めたのは、私がeBayと協力してキャンペーンを行った時だった。

eBayと一緒にキャンペーンを行ったの。

そのキャンペーンのテーマは、時代や状況を変えるといったようなコンセプトで、女性のスニーカーヘッドについての内容だった。

私は会議の中で「なんでスニーカーヘッドと呼ぶの?」って聞いたの。「なぜ私たちはここにいるの?」って。

その時、説明してもらったのを凄く覚えてるんだけど、今の時代において、その言葉が多くの若い女性にとってどれほど自分自身のアイデンティティーとなっているか、ってことだった。

例えば「female sneakerhead(:女性スニーカーヘッド)」っていうハッシュタグを見れば、どれだけ多くの投稿がされているか分かるはず。

若い女性たちは、female sneakerheadという言葉が何か違う意味を持っていると感じているみたい。

それはエンパワーメントの言葉でもあるの。

スニーカーヘッドという言葉は男性だけを指す言葉だと認識されている節がある。

だから「female sneakerhead」という言葉は、彼女たちにとって非常に重要な意味を持ってるんだって。

変わり続ける文化の背景

私たちにはOG(先駆者たち)が必要

もし私が自分の考えを変えずに彼女たちの中に参加しなかったら、その空間でリーダーシップを発揮することはできなかった。

私が引っ張ることができないじゃない。彼女たちにはリーダーが必要で彼女たちのOG(オリジナル/先駆者たち)が話すことを聞く必要があるのに。

なぜなら、もしそんな人がいなかったら、どんな文化にもいえることだけど、先輩たちや先駆者たちが話して知恵を与えない限り、文化は成り立たないから。

だから、私はいつも言い続けてることがあって、OGたちをなくすことなんでできないの。脇に押しやってしまうとか。

だって、じゃあ、誰がその場所をリードして指導して、知恵を授けて、文化の真実を伝えてくれるの?

OGたちがいるからこそ、誰かが、とあるスニーカーについて全く新しい話として伝えようとしているところで、OGたちが「いや、それは違う!そのスニーカーは全然人気じゃなかったよ」って本当の話をしてくれることになる。

文化が存在している場所

私にとっては、文化がどこで生きているのかっていうのをまず定義することが重要だと思ってる。

私たちはオンラインの文化を持ってるでしょ。

日常的にどういう風に交流して、お互いにおはようって挨拶して、どういう風に紹介して、オンラインで世界に向けて配信したりもする。

それも文化が存在する場所の1つ。

だけどほとんどのオンラインの人たちが気付いていないのが、スニーカー文化は現実の世界にも存在しているということ。

それはブロックで出会った女性たちがブランチに行く準備をしているときだったり、皆がスニーカーを履いてスニーカーについて話す瞬間でもある。

スニーカーを手にいれるために一緒に出かける女性たちのグループだったりする。

それはスニーカーが大好きな人たちと一緒に行くイベントやパーティー、そして頻繁に訪れる場所にもある。

だからオンラインで存在する文化と対照的に、現実の生活の中にもスニーカー文化があるってことなの。

大きな変化の年

そして、私は、みんなが同じわけではないし、同じ人々でも、同じ文化でもないと思ってる。

だから、まず最初に私は自分自身が見ているものを識別したいって思ってるの。

私は現実世界のものも見ていて、オンラインでのみ存在するものも見てる。

それに、その2つの場所が存在しないことにも気付いてるの。

それについて私自身がどう感じてるかって?

私はスニーカー文化が何か奇妙な時期にあるって感じてる。何年かに一回のペースで変化があったりしているからかな。

そして、今年は大きな変化の年だと感じてるの。

2022年はすべてが女性、女性、女性...っていう感じだった。

今ではすべてが女性のために達成されてきた。

だけどそれもまた変わっていく...私たちがどうやって前進するかが変わっていくんだと思う。

新しい世代による新たな変化

AF1の新しい呼び名

今ではAir Force 1を表す新しい呼び名があるんだって。

新しい呼び方は今すぐ思い出せないんだけど...私たちはAir Force 1のことをUptown(アップタウン)って呼んでる。

Air Force 1のことなんて呼んでたかな、新しい呼び方が思い出せない。

最近チャットで送ってきてたんだけど忘れちゃった。すぐ思い出すと思うんだけど。

私がその新しい呼び方を聞いた時「何それ?」って言ったら、「Air Force 1のことだよ」って言うの。私は絶対違うって言ってて。

私は新しい呼び方では呼ばないよ。何、どうしたの、なんでそんな呼び方するの?って感じ。

ちょっと待ってね、Air Force 1をどうやって呼んでるか確認しないと。

う〜ん、そう、「G-Nike」だ。「G-Nike」って呼んでるみたい。

G-NikeがAir Force 1のことなんだって。だからこの前「クールだけど、あなたはG-Nikesをよく履くね」って言われて、

「私が“よく履いてるスニーカー”なんてないよ、だって毎日気分が変わるんだから(毎日の気分に応じて違う靴を履くから)」って訂正したんだけど、

「え、それでG-Nikeって何?G-何って?」ってなったの。

もう何かの新しい言葉だってのは分かってた。何か新しい単語なんだって。

そのことに夢中になってたの。G-Nikeって何?って聞いたらAir Force 1のことだって言うんだよね。もう私は「何それ?」ってなっちゃって。

Air Force 1をG-Nikeって呼んでるの?って感じだった。それで、若いインターンの子が「G-Nike」に関連する曲を教えてくれたり、

G-Nikeのハッシュタグだったり、その世代がG-NIKEって言葉をどう使っているかっていうのを教えてくれたりした。

でも私は「絶対違う、Air Force 1はAF1で、Uptownでしょ」って。

そしたらインターンの彼女は「なんでアップタウンって呼ぶの?ローカットだから?」って言うんだよね。

だから私は「スニーカーのデザインじゃなくて、Air Force 1が主にどこで履かれていたかっていうのが由来なの」って答えた。

おもしろいよね。でも、確かに文化の風景は変わってる。

次世代が状況を変える

この世代、Z世代じゃなくて、Z世代の次は何になるだろう?たぶんウルトラ世代とかそういうのじゃないかな。

だけど、私は新しい世代がZ世代よりもスニーカーとか歴史についてもっと知りたいっていう欲望が自然にあると思ってる。

だから、この新しい世代が少し今の状況を変えていると感じてるの。

私はミレニアル世代だから、私たちの後の世代とは少し違ったんだよね。歴史とかはその世代にとっては重要ではなかった。

でも次の世代が登場してきて、新しい世代の人たちはすべてを知りたがってる。すごく興味を持ってるの。

でもやっぱり最終的には、あなたがスニーカーに没頭し続けている限り、アドバイスとか知恵だったり、歴史について聞いてくると思う。

実力を“証明”すること

かつてスニーカーを収集していた人たちの中にも、随分前にハイプなものやスニーカーを集めることをやめた人がいる。

年を重ねるにつれて、人生にはいろんな出来事が起こる。

家族ができたり子どもができたり、それぞれフォーカスする点は変わってくる。

それも理解できる。私は家族ができても、子どもができても、スニーカーは変わらず私の人生の一部だと思う。

でも多くの人はそうは考えない。だから彼らは徐々にフェードアウトしていくの。

そうやって先駆者たちや先輩たちが文化から離れたり、文化から遠ざかったりする。

そして、若者たちは文字通りスニーカーだけを聞くことになる。スニーカーが彼らに語りかけるんだろうね。

だから、最新のものを履いたり、レアなものを履いたり、どこにでもいて、イケてる姿のあなたを見た時にようやく、やっとこういった若者たちが耳を傾けてくるようになるの。

それで「彼女は長い間これをやってるんだよ、彼女のスニーカーコレクションを見てみてよ」って。

どれだけ多くのスニーカーを持ってるかとか、どんなスニーカーを持ってるのかとか。

その時が彼らが耳を傾ける時なんだと思う。

自分たちの目で確かめたにといけないんだろうね。若い子たちは、ちゃんと実力を証明できることが全てなの。

 

続きはこちら>>Jixieさんへインタビュー Vol.4

SNKRGIRL編集部
SNKRGIRL編集部
神戸・東京・ニューヨークのメンバーと共にグローバルに活動する編集部メディアチーム。

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